妊娠中絶は、妊娠が終結し、胎児が死亡したことを言います。
日本の法律においては厳密には「妊娠中絶」という用語はなく、妊娠中絶の時期により、流産と死産の二つ言葉で表現されています。
流産とは妊娠22週未満の妊娠の中絶によって胎児が死亡した場合のことです。胎児が母体外で生存できない時期における妊娠の中絶を意味します。
死産とは妊娠22週以降の妊娠の中絶によって胎児が死亡した場合のことです。
また、一般的には中絶と言うと人工妊娠中絶のことを指すことが多いです。
人工妊娠中絶とは人工的な手段(手術または薬品)を用いて意図的に妊娠を中絶させ、胎児を殺すことを指します。
日本国において中絶は、一般的には犯罪行為です。自分や他人の中絶を行った者は、刑法の第二十九章(堕胎の罪)にある、いずれかの条の罪を犯した者として訴追され、懲役刑に処せられる可能性がある。一方、母体保護法(1996年以前の法律名は優生保護法)は、「母体の健康を著しく害するおそれのある」場合等に、特別な医師(指定医師)が本人等の同意を得た上で「中絶を行うことができる」と定めており、この規定に則った中絶は、刑法の正当行為規定の適用をうけて、罰されることはありません。
中絶方法としまして、3つの段階があります。
まず、初期中絶(〜妊娠11週目位まで)です。
日本では、頚管拡張後、掻爬術(独:Auskratzung)や産婦人科器具(胎盤鉗子やキュレット、吸引器など)で胎児を取り除く方法で行われます。海外では、1980年代にフランスで開発されたミフェプリストン(RU- 486)という人工流産を引き起こす薬が急速に広まり、2002年にはWHOも推奨する初期中絶(ただし7週以下)の一方法になったが、日本では未承認です。厚生労働省は2004年、自己判断での使用による副作用防止のため、この薬の個人輸入に事実上禁止に近い制限を課した。最近では子宮外妊娠(頸管妊娠)の治療として、メソトレキセート(抗癌剤)の注入により妊娠組織を壊死・消失させる方法も行われています。
次に、中期中絶(妊娠12週程度〜21週目まで)です。
この時期は胎児がある程度の大きさとなるため、分娩という形に近づけないと摘出できません。そのためラミナリアやメトロイリンテルなどで子宮頚部を拡張させつつ、プロスタグランジン製剤(膣剤、静脈内点滴)により人工的に陣痛を誘発させる方法があります。また、海外では中期中絶にも器具を用いる D&E(Dilation and Evacuation ;「拡張と吸引」)と呼ばれる手法がしばしば行われ、WHOも陣痛誘発法より優先すべきことを推奨しています。日本では妊娠12週以降は死産に関する届出によって死産届を妊婦は提出する必要もあり、人工妊娠中絶の約95%が妊娠11週以前に行われています。
最後に、後期中絶(妊娠22週以降〜)です。
妊婦側の申し出による中絶は法的に認められておらず、また医療上の理由で母体救命のため速やかな胎児除去の必要性が生じた場合でも、早産の新生児が母体外でも生存可能な時期以降は帝王切開など胎児の救出も可能な方法を優先すべきです。しかし、それが不可能な状況のとき又は他の方法を施しても胎児の生存の見込みが無いと判断されたとき、胎児の体を切断したり頭蓋骨を粉砕して産道から取り出す等の緊急措置が行われることも想定されます。現代では必要性は少ないが、かつて医療水準が低かった時代には、分娩時に手足が引っ掛かった逆子や胎児の頭が大きすぎて骨盤を通過できず母体が体力消耗して生命の危機にさらされたとき、こうした救済措置がとられることがありました。